おばあちゃんの家にいた猫のこと

うちわと寝転がる猫
もうひとりの家族だった、おばあちゃんの家に居た猫との思い出
おばあちゃんの家でいたとき、もうひとりの家族ができた。それは人間ではなく、三毛猫。そして、その猫と過ごした時間も、かけがえのない思い出の一つとなっている。
都会ではなかなかペットを飼える環境ではない。だからこそ、なんの気兼ねもなく猫と過ごせたのも、印象に残っているのではないかと思う。

「モロ」という名前の三毛猫を拾ってきた

猫との出会いはおばあちゃんの家に行って二、三日後のこと

その三毛猫と出会ったのは、おばあちゃんの家に行ってすぐのことだった。記憶はちょっとだけ曖昧ではあるけれど、たしか二、三日目のことだったと思う。どこからともなく、おばあちゃんの家の近くにやってきたのを私が拾ってきたのだった。
その猫は、白をベースで黒と明るい茶色の毛が綺麗に混じり合った、いわゆる三毛猫。普通、野良猫は人が近づくと逃げていくものだけれど、この三毛猫は逃げなかった。むしろ人に慣れている様子で、私の方に寄ってきたのだった。そんな可愛い仕草に、私は心を奪われたのかもしれない。
三毛猫をつれておばあちゃんの家に飼えると、おばあちゃんも「あら、かわいい猫ちゃんだね。」と言ってくれて、そのまま家の土間で飼うことになった。その日はさっそく、おばあちゃんが猫まんまを作って、食べさせてあげていたのを覚えている。

モロと名前をつけたのは、流行したアニメの映画から

拾ってきた三毛猫を飼うにあたって、必要なのは名前だ。我輩は猫である、の主人公ではないのだから、ちゃんと名前をつけてあげたかった。そしてつけたのが「モロ」という名前であった。
なぜモロという名前をつけたのか?それは、一時期大流行したアニメーション映画に出てくる犬のキャラクターから。犬のキャラクターの名前を猫につけるのは、ちょっと変かもしれない。でもこれにはちゃんとした理由があった。
そのアニメーション映画のモロは、神聖な森を守る犬の神として描かれていた。おばあちゃんちの周りの自然の広大さの中で出会った三毛猫に、自分は「この猫は自然の守り神のような存在」という印象を持ったので、モロと名付けたのだ。
「モロ」とその猫を初めて呼んだ時、無言で近づいて私の足に頬を擦り寄せてきた。その行動から、きっとモロという名前を気に入ってくれたのだなと、勝手ながら思ってしまった。そして初めて、モロと意思疎通のようなものができた気がした。

モロと一緒に遊んだ楽しかった思い出、そして無言の別れ

モロと自然の中で遊びまわった

モロとの遊びは、とても楽しかった。それは、家の中という限られた空間だけではなく、外でも自由に遊ぶことができたからだ。
昼間のモロとの遊びは、外に出かけることが多かった。畑や山に行ったり、川に行ったりと、いろんなところへ行った。
山ではモロがあちらこちらを動き回り、気分が乗ったら登れそうな崖をたっと駆け上がって私を見下ろすこともあったし、畑では動き回る虫を追いかけ回ってはしゃいだ。
川では、私は水に浸かって涼み、モロはそれを見ていたり、そこら中をウロウロしたり。
はたから見ると、他愛のない遊びだったかもしれない。でも遊んでいる私、そしてきっとモロも、最高に楽しい時間を過ごしていたと思う。そして遊びまわって疲れた私たちを、おばあちゃんは優しく出迎えてくれていた。

ある日、突然モロはいなくなっていた

モロと私は、とても楽しい時間を共有していた。でも、そんな楽しい時間は、皮肉にもそう長くは続かなかった。
なぜなら、ある日突然にモロはいなくなっていたからだ。それは確か、モロと知り合ってから一ヶ月くらいが経ったころだっただろうか。
いつも、夜になるとモロはおばあちゃんの家に帰って来ていた。私とモロは、毎日全ての時間を一緒にいたわけではなかったが、習慣的に夜ご飯の時間前にはモロは帰宅する習性がついていたので、半分放し飼いのような感じだったのだ。しかし、その日、モロは夜になっても帰って来なかった。

家の中でずっとモロの帰りを待ち続けたが、翌朝になっても家にはモロの姿が見えない。それから二日くらいは、おばあちゃんの家の周辺にモロが居ないか探し回った。しかし、結局はその姿を見つけることはできなかった。
モロとの出会いが突然だったように、モロとの別れもまた唐突。それはとても悲しく、自然と涙が出てきてしまった。
もう二度と、モロと自然の中で遊びまわることができないと思うと、とても寂しかったからだ。でも、今考えると、もしかするとモロは私が名前をつけた理由の通り、森の神様だったんじゃないかなとも思う。それは、モロのおかげで、おばあちゃんの家の周りにある自然にすぐに馴染むことができたから。
今になってもモロとの思い出は、別れが悲しすぎた分、その楽しさが自分の心の中に深く刻まれている。
その他の思い出記事はこちら → 古い木造住宅の思い出